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米若者たちの「都会離れ」、アフターコロナに向け加速の兆し

いつもであれば、残り半年を切った大統領選挙に向け、フルスロットルでキャンペーン活動やテレビコマーシャルが展開されている時期なのだが、いまアメリカ国民の関心はそこに向かうことはなく、メディアもあまりこのイシューを取り上げない。

 

アメリカでは、国民に向けた大人1人当たり約12万円の給付金はとっくに給付が完了し、先日コラムで取り上げた企業救済のためのPPPという「返済しなくても良い事業者ローン」も、どんどん振り込みが始まっている。この連邦政府のスピード感は誰も想像できなかったもので、トランプ大統領への評価となってはね返ってきている。

 

街に目を向けると、約2カ月の自宅待機命令を経て、アメリカの各州は段階的それを緩和し、少しずつ活気が戻るようになった。

 

筆者の住むネバダ州では、レストランが再開し、収容キャパシティー50%を限度に客を入れることが可能になった。ただし、50%超えた場合には、客を外で待たせなければいけないことになっている。ひさしぶりに整髪に出かけると、解放感に湧く人々の表情が印象的である一方で、誰もがまた待機令が出るのではないかと危惧しているようにも見えた。

 

感染者数が十分に減少していない地域では、待機令の延長の準備に入っている。人々がマスクなしでビーチに出かけるという自宅待機への抗議で注目を集めたロサンゼルス郡は、3カ月の延長を検討していると発表しており、地域によって対応にはかなり開きが出ている。

 

ここからは、連邦政府による一律の政策というよりは、各自治体の首長のリーダーシップが問われそうだ。

 

4割が都市から郊外へ引っ越しを検討
ところで、この待機令の2カ月が市民に与えた恐怖と不便は、人々が密集する「都会暮らし」を見直させることになった。

 

世論調査機関のハリス・ポール社によれば、平均して4割の都市部居住者が、コロナ禍を契機に郊外への引っ越しを検討していると答えており、この傾向は18歳から34歳までの若者世代になるとさらに強くなるという。最近、購入または賃貸のために不動産のサイトを訪れた人は、郊外の住民では21%であるのに比べ、都市部の住民ではその倍の43%にのぼっている。

 

これは、コロナ禍収束までの道のりの長さを人々が覚悟していることを表しているとともに、収束しても、仕事のスタイルは元通りには戻らないだろうと見ていることも示唆している。

 

つまり、一度、テレワークが定着してしまったため、従業員間でその利便性への支持が強くなり、オフィスの在り方が変わるだろうという予測だ。アフターコロナでもテレワークが続くのであれば、なにも都会に住まなくてもよいという割り切りでもある。

今となっては、人々がZoomのことを話題にしない日はない。Zoomで会議をし、Zoomでヨガクラスに出る。ウィキペディアによれば、コロナ禍の前には1日の平均ユーザー数が1000万人しかいなかった同アプリは、この3月には約2億人に達しているということだ。

グーグルも、いままで法人ユーザー専用だったZoomと同種の会議アプリを、「グーグル ミート」と改称して、一般ユーザー向けにも無料で今月からサービスを開始した。もちろん、従来からスカイプやLINEでも同じことはできていたのだが、このビデオ会議の普及は必要に迫られ、大躍進した。

 

また、ビル・ゲイツも指摘しているように、コロナ禍でパンデミックは終わりということではなく、近い将来、もっと死亡率の高い感染症の世界的な流行になったときには、人口の密集する都市部にいたくないという意識も、人々の心にはある。

 

恒久的テレワーク体制に入った事業所も
実は、この都市部からのUターンのトレンドは、若者のライフスタイルとして新型コロナの前から予兆があった。

 

通勤渋滞を嫌う若者世代は、21世紀に入ってから近年は、一貫して都市部、それもダウンタウンでの便利な賃貸生活を好む傾向にあった。クルマを持たないため、全米各地で公共交通機関がアップグレードされ、ライトレールと呼ばれる路面電車も拡充された。ウーバーなどのライドシェアもこれを加速させていた。

 

しかし、この数年でその事情は変わりつつあり、若者の好みは世代回帰ともいうべき、古いライフスタイルに戻る傾向がある。国勢調査によれば、100万人以上の都市は成長率が鈍化、もしくはマイナスに転じている。ハリス・ポール社は、新型コロナ禍がこの転換を加速させていくだろうと予測している。

 

実際、コロナ禍による惨状ばかりが伝えられる一方、共働きが一般的なアメリカでは、子供と過ごす時間が持てたことを喜ぶ声は小さくない。

 

一般家庭では、子供の学校や稽古事への送り迎えなどの負担の分担はいつも夫婦間の重い問題になっていた。多くの世帯が、テレワークへの望みを持ちながら、それをおおっぴらに上司に打診することは、なにかと憚られていたのがこれまでだった。

 

しかし、こうしていったんテレワークがスタンダードになると、事務職を中心に、それを主張することになんのためらいもなくなると見られている。

 

ロサンゼルスのある会計事務所は、いち早くこの動きを見て取り、オフィスリースの更新契約が来たので事務員にアンケートを取り、アフターコロナでもテレワークを続けたいかと聞いたところ、全員がイエスと答えたので、事実上、恒久的テレワーク体制に入った。

 

たった1年で、失業率を全国平均で10%も上げてしまった不況から、少しずつ平常に戻る道を踏み出したアメリカだが、コロナ禍が残した影響は大きく、人々は、ますますこれまでとは違う価値観での仕事や住居の取捨選択に目を光らせている。アフターコロナに向けて、都会離れとテレワークは、今後ますます定着していくのかもしれない。

ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信